鳥山雄司さんインタビュー Vol.3

鳥山雄司さん 鳥山雄司さんインタビューの第3弾。残念ながら今回が最終回! 鳥山さんの責任感あふれる言葉に、感激したインタビューとなりました!



矛盾っていうのはそれを感じたときに解かないと

■イマージュからずいぶんと時間がたっていますが、やはりあの旋律は残っていますよね。特に若い人にとって鳥山さんは、「世界遺産」の人、「イマージュ」の人というふうに受け止められていますよね。ギターの人、という印象ではなく。

そうですね。でもね、昔からの仲のいい友だちは、「きっと鳥山は60(歳)になってもどこかのジャズクラブでギター弾いているんじゃないの」って言うんですよ。「ギターさえ与えておけばいいよ、こいつには」というね(笑)。そういう側面はあるんですよ。
なんかそのへんは、大きな表現を許してもらえるとすれば、音楽家としての使命みたいな部分と、どこで整合をとるかだと思うんですよ。「人のことなんてどうで もいいや」って思ったら、たぶんギターだけ弾いているのかもしれませんね。けど、きっとそれでは満足しないのだと思います。
(日本の音楽が)だいぶ拙(まず)い方向にいっちゃってるなっていうのを感じますね。

■それは作り手としてのご自身の責任も含めて、ということですよね。

そうですね。失礼を恐れずに言わせていただくと、決して音楽的素養に恵まれた人だけが世に出ていくわけではないんですね。パフォーマーとしてはすばらしいけど、音楽的なジャッジができない人とか。
「この音、ここにあると気持ち悪い」というようなことを歌いきってしまうのがカッコいいと思っている。それはもう理屈じゃないんですよね。後で聴くとやっぱり 気持ち悪かったりするんですね。ぼく自身それに矛盾を感じていながらも、押し切って作ってしまった作品というのが、それこそ膨大にあるので。
矛盾っていうのはそれを感じたときに解かないといけないんですね。だからそれを今必死に巻き返そうかなって思っていて(笑)。

■責任感強いですよね(笑)。

みんなそうなんじゃないですかね(笑)。

画像:都内某所にある「鳥山スタジオ」で、父親のギター「ギブソンL-48」を弾く鳥山雄司さん




鳥山雄司さん



次に進むためには仕方のないこと

■自分の作ったスタイルを一方で否定しながら、新たなもっといいものを生み出していこうというのは、ものすごく大変なことですよね。

そうですね。エネルギーは必要ですよね。
人によっては、1アーティストをずうっと好きなファンっていうのもいるじゃないですか。その人にとっては、「今まではなんだったんだよ」ということになるわけですよね、否定するということは。だから「それはできない」と。
自分がやってきたことには全部責任を持って、肯定的に積み重ねていく、という方もたくさんいると思うんですね。でもマイルス(・デイビス)なんかは「ジャズは死んだ」とか言っちゃって(笑)、いきなり違うことになっちゃったり。
レニー・クラヴィッツも「ロックは死んじゃったんだ」ってことを平気で言ってましたよね。
今まで信じてきたファンにとっては、そこで一度ブチっと切られちゃう。でも、次に進むためには仕方のないことだとは思いますけどね。

こないだジェントル・ソウツがリユニオンのDVDを出したんです。ぼくが神保君、和泉くんとやっている「PYRAMID」と同じレコード会社でね。それを見 たんですけど、「キャプテン・フィンガーズ」とか、昔すごいかみそりのように軽やかに演奏していたものが、今もしっかり演奏されているんですけど、重量級 になってしまって……。
すごいんだけれど、おもしろくないみたいなね。そういうのってありますよね。そこってむずかしいですよね。いろんな経験を積んで、引き出しも増えるわけだしね。
で、引き出しを捨てる必要はないと思うんですよ。そういう人は高級感出ちゃうんですよね。

変 なたとえですが、昔はマツダのRX-7だったものが、今はベンツのSクラスになっちゃうみたいなものじゃないですか。重い車って初速はないけど、乗り心地 がよかったり、すばらしい安全性だったり、いいところは絶対あるはずなんですね。そのいいところをアピールするには、どうしてもほかの要素を出してあげな いといけないんですよ。
その歳、年齢なりのそのアピールをしていかないと。20年前と同じことやります、っていうのは趣旨としてはおもしろいけど、ちょっとね。




気分はすっかり高校生に戻っちゃった

■PYRAMIDのアルバムがリリースされたばかりですが、神保さん、和泉さんとは学生時代からの音楽仲間だそうですね。

彼らはぼくよりひとつ上なんですけど、神保君とバンドをやっていて、和泉君とも別のバンドをやっていたんですよ。クロスオーバーバンドですね。
今回のアルバムに収録されている「FEEL LIKE MAKIN' LOVE」のボブ・ジェームス・バージョンは最初に神保君とやった曲なんですよ。和泉君ともあの曲はやっているので、3人とも目をつぶっていてもできるという(笑)。

■そもそもPYRAMIDはどういういきさつで始められたんですか?

あれはですね、うちらの学校はOB会が盛んなんです。マンモス校なので。大学卒業年度の卒業年、卒業10年、卒業20年……という感じでね。
その卒業20年のときに、OB会の役員になった友だちから電話がかかってきて、「何かやれ」と。それこそ「イマージュ」がブレークしているときだったので、 「ヒーリング系のをやってくれない?」って話だったんですよ。「それにはオーケストラとまでは言わないけど、さすがにカラオケを持っていくというわけにも いかないし。つまらないんじゃないの」って話をして。それで慶応出身のミュージシャンって意外と多いので、そうじゃなくて「アマチュア時代の仲間を呼ん で、やるっていうのはどう?」って提案したら、「それはおもしろい」と。それで和泉君と、神保君に声をかけたんです。

和泉君はOKだったんですが、神保君はスケジュールが空いていなくて、じゃあ二人でということで、和泉君とアコースティックデュオをやったんです。
和泉君とアコースティックのデュオなんてやったの初めてだったし、和泉君と演奏するのも十数年ぶりだったんだけど。なんか気分はすっかり高校生に戻っちゃっ たんですよ(笑)。すごくよかったんですね。お互いいろいろ経験して、引き出しも増えているし。アンサンブルも昔よりできているし。ただ温度感は変わって いなかったので、これは神保君も誘ったらおもしろいものができるかもね、ということで。
その後、神保君と3人で食事しながら「おもしろかったよ」って話したんです。そしたらいきなり盛り上がっちゃって、その場で3人でいろいろなライブハウスに、マネージャーも通さずに電話かけまくって(笑)。暮れも差し迫った12月27日くらいにね。

もうほとんどはブッキングされていたんですが、「どうしてもすぐやりたい」と(笑)。で、今はなき六本木のPIT INNが、日曜日の昼間ってふつうはやらないんだけど「あけてもいいよ。その代わり、4時までに完全撤収してくれれば」って。で、1か月後にやったんですよ。
ホームページに「やります」ってちょこっと告知したら、200人くらいの方が来てくださったんですよ。そのときに、ここで(鳥山スタジオ)でリハーサルをやったんですけど、もう部室になっちゃう感じなんです。

ぼくからすると、和泉君と神保君というのは、それぞれカシオペアの神保彰と、T-SQUAREの和泉宏隆ではなく、高校時代の仲間なんですね。
神保君は千手観音のようにたたくけど、高校時代のグルーブ感のテイストは持っているし……。そのグルーブ感と肌合いが、練習して出るようなものではなかったんですね。

プロになりたくて、おんなじような音楽を聴いて、おんなじように練習してきたので、なんか捨てがたいものがあって。練習してるときにちょっと音をとってみようか、ってとったらすごくまとまりよくて。
だったらCD作っちゃおうか、ってことになって。どこの事務所もかかわらずに、音だけ作っちゃったんです。すごくゆっくりと。
だから二年半もかかっちゃったんです(笑)。二年半かかって納得いくものができて。「これなら懐古主義じゃないし、新しいこともやっているし、出してみようか」ってことになったんですね。

画像下:レスポールを弾く鳥山雄司さん




レスポールを弾く鳥山雄司さん



アコースティックギターの可能性は追求してみたい

■時間をかけるというのも、それはそれで根気が必要ですよね。

そうですね。3人それぞれのやってきたことが反映されていて。ぼくは人のアレンジ、プロデュースをしてきて、彼らはライブパフォーマンスでいかにクオリ ティーを上げて、エンターテインメントにするかということに命をかけてきてるんですね。だからやったらやりっぱなしなんですね(笑)。
それをやりっぱなしにしておける性格ではないぼくが、いろいろといじると、「あ、そうきたか。じゃあ」っていうことで、相乗効果でね。なので、まったく同じ方向性で仕事をしてきたならば、ああいうふうなものにはならなかったと思うんですね。

どうしてもぼくの職業柄、アップトゥーデートしないと気がすまないのと、途中で「あ、これはだめだ」って思ったことがあって。それは、ぼくらが最初に感化さ れた音楽というのがメイド・イン・アメリカだったんですね。そのアメリカ人のファンキーな感じが、今の僕たちの音楽にちょっと合わないんじゃないかって思 えてきたんです。3人の温度感がつむぎ出すものが、ちょっとヨーロピアンな感じもあって、ブルージーとかファンキーだったりする要素があんまりないんで す。現状、北欧系のフューチャージャズぽい方向性に向かっていったんですね。

■今後の活動ですが、どういったふうな……。

さっき言ったように、責任はとらなくちゃ、と思っています。
作・編曲家という看板は残ると思うんです。だからギタリストとしてどこまでできるかわからないですけど、(渡辺)香津美さんにしてもみなさんなぜかクラシック系の、アコースティックギターにいっていますよね。その可能性は追求してみたいな、とは思っています。
やっぱりクラシックの木村大くんと「イマージュ」で出会って、クラシックギターのおもしろさや、奥深さが分かったので、ポップフィールドにいたぼくがクラシックギターを使ってどんなことができるのか、というのをソロの活動でやっていきたいと思っています。
あとPYRAMIDはライフワークとしてやっていきたいと思っています。




ES-330

■ギタリスト鳥山雄司さんにとっての「この1本」をご紹介ください。

そ うですね。どれかなー。そうだなー(と、しばらく悩んで)。プロになってからがむしゃらにやってきたうえでの1本となると、(ギブソン)ES-330とい うギターですね。335ではなくて、完全なホローボディーのセミアコなんですけど……。それかもしれないですね。セミアコじゃないと仕事にならないんじゃ ないかという強迫観念もあり、なけなしのお金をはたいて買いました。ずいぶん使っていましたね。




練習するクセ、録音するクセ、イメージするクセ

■ギタリストを目指す人へ、アドバイスがあればお願いします。

そうですね。的を絞るということがまず大事です。どんなギタリストになりたいのか、というね。まずはイメージすることですね。
どういうギターを弾いて、どこに立っていたいのか。武道館に立ちたいのか、スタジオにいたいのか、誰かのバックをやりたいのか。
そういうイメージがないと、ギタリストになってもどうなりたいのか、決められないと思います。

もちろん練習は死ぬほどするしかないですし(笑)。今ほんとにギタリストで食べていくのは、とっても大変なんです。なので、こういうギタリストになりたいと決めるまでは、思いつづけることが大事なんじゃないか、と思いますね。

■練習は今でも?

しますね。最低でも1、2時間。弾くとしてもアコースティックギターですね。両手の感覚を取り戻すにはアコースティックがいいんです。
あとね、弾きっぱなしってよくないので、録音してみるのがいいですね。とってプレーバックする。全部クセにすればいいんです。練習するクセ、録音するクセ、イメージするクセ(笑)。
そんな感じがいいと思いますね。

■クセですね。よくわかりました。今日はどうもありがとうございました。




---自分が過去に作ってきたものを否定して、新たな要素も加えていく。名を成した人ほどむずかしいことですが、鳥山さんはそれを実践(じっせん)しようとしています。いいお話を聞くことができました。本当にありがとうございました!
●撮影、文:Yahoo!オークション
●協力:ルビコンインターナショナル/鳥山スタジオ



「PYRAMID」アルバムジャケット PYRAMID

鳥山雄司さん(g)、神保彰さん(dr)、和泉宏隆さん(key)という、学生時代からの音楽仲間(なんて豪華!)が集ったトリオ「PYRAMID」。
インタビューにある製作過程を経て生まれたグルーブは「絶品」!
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「世界遺産」組曲、中国でリリース!

鳥山さんの代表作“「世界遺産」組曲”が8月24日、中国でもリリースされました。
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鳥山雄司さんオフィシャルサイト

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