『LOVE GUITAR』のできるまで Vol.7

制作プロデューサーが語る、「日本初のギターの名演・名曲だけで編集された6枚組コンピレーションアルバム『LOVE GUITAR』のできるまで」。その最終回!



『LOVE GUITAR』の各ディスク紹介もいよいよ最後になりました。今まで、過去の名演・名曲を紹介してきましたが、今回ご紹介するのはこのセットのために新録をした一枚です。

「Love Guitar」ディスク6の盤面今回は6枚目、『Dance Love Guitar』です。盤面には解放(弦を押さえない)で弾くと「E」の音を奏でる6弦(ギターの一番太い弦)が印刷されています。なぜ6枚組にしたのか、をこの連載のVol.1にも書きましたが、ギターの弦とディスクとを、ちょっとした遊び心でこんなふうに関係づけてみました。(ちなみにCDケースからCDをとりだして、付属の袋に入れるとギター弦らしさがアップします。)このディスクにはタイトルどおり、ダンス・ミュージック(特にディスコ・クラシック)をギター・デュオによる演奏で収録しています。
この新録のために参加してくれた「アコースフィア」というギター・デュオは、まだ知る人ぞ知るという新人なので知らない方も多いと思います。

しかしながら、彼ら二人だけで創り出すギターサウンドは、ギターの可能性の限界に絶えず挑戦をして、聴く人の耳を捕らえたら放さないくらい魅力的だと思っています。ギターの魅力を知ってもらおうと、このコンピレーションアルバムの制作をした自分で言うのもなんですが、このディスクは「ギターという楽器はこんなにも魅力的だったのか!?」と再認識するくらいの出来映えなので、ギターラボの読者の皆さんにきっと興味を持ってもらえると思います。

アコースフィアの二人

アコースフィア 左:奥沢茂幸、右:清水敏貴

このギター・デュオ「アコースフィア」のプロフィールなどは、来週以降にギターラボでのインタビュー掲載が決定しましたので、そちらをお読みいただきたいと思います。今回は制作プロデューサーの私が彼らとどのように出会い、なぜこのジャンルのスタイルで演奏してもらうことにしたのか? を手短にお話ししたいと思います。彼らとの出会いは4年前にさかのぼります。以前より親交のあったタック&パティの来日公演に招待され、その楽屋でアコースフィアを紹介されました。その時に渡されたデモCDを聴いてすごくおもしろいと思った記憶があり、昨年、久しぶりに再会しました。そして最近の音を聴かせてもらったところ、更に進化していて音ひとつひとつにギターの未来を感じ、今回のセットにぜひ参加して欲しいとお願いしました。そして選曲については、彼らの魅力の一つであるアレンジ力を紹介できる一番良い方法は何かと考え、カヴァーをお願いすることにしました。なぜ、ダンス・ミュージックにしたかと言うと、いろいろ理由があります。すべては書ききれないのですが、その理由のひとつは、昨年見に行った「マウント・フジ・ジャズ・フェスティバル 2003」でディスコ系のバンド(シック、アヴェレイジ・ホワイト・バンドなど)の生演奏に触れて、ディスコ・クラシックとジャズ/フュージョンとの相性がすごく良いということを感じたからです。このセットの選曲がジャズ/フュージョン系を中心にすることは決まっていたので、大編成で演奏されている楽曲をギター二人で演奏できたらおもしろいし、他の盤との流れもいいし、なによりほかに類を見ないものだなぁと思いついたのです。


この盤の収録楽曲は全てこのセットのために新たに録音したものですが、原曲は皆さんもご存知のものばかりです。興味を持った方は下記からリンクしている『LOVE GUITAR』の詳細ページで一部試聴もできますので、ぜひお聴きください。ではこのディスクの聴きどころの名曲をいくつかご紹介したいと思います。

アコースフィアとタック&パティ1曲目:帰ってほしいの/アコースフィア・ウィズ・タック・アンドレス(from タック&パティ)
原曲はあのマイケル・ジャクソンがリード・ヴォーカルだった、ジャクソン家の5人兄弟によるグループ「ジャクソン5」の1969年のデビュー曲。全米1位という大ヒットを記録した楽曲で、オリジナル・タイトルは「I Want You Back」。この曲には、アコースフィアを紹介してくれたタック&パティのタック・アンドレスがゲストで参加してくれました。リズム・セクションを一手に引き受ける奥沢茂幸のベース・ライン、ギターを歌わせることに魂を込めた清水敏貴のメロディ、そしてタックのコード・ワークがひとつになって、絶妙のアンサンブルを聴かせてくれます。ちなみに右チャンネルでプレイしているのがタック。レコーディングは、ほとんど一発録りに近い形で行ったんですが、アコースフィアとタックの息の合い方は見事としか言いようがありませんでした。


アコースフィアとペッカー5曲目:ホット・スタッフ/アコースフィア・ウィズ・ペッカー
原曲は「ディスコの女王」として音楽シーンに君臨していたドナ・サマーの1978年の大ヒット曲で、全米1位を記録しているほか、最近ではコカコーラのCMでも使われていたので、聴けば「ああ、あの曲か!」と思うはずです。この曲には日本を代表するパーカッショニスト、ぺッカーさんに参加してもらいました。ぺッカーさんがアコースフィアのことを気に入ってくれ、この曲以外に2曲ぺッカーさんが参加してくれています。この曲のことを、アコースフィアが「宇宙のホット・スタッフ」と表現したりすることがあるのですが、アース・ウインド&ファイアの「宇宙のファンタジー」と「ホット・スタッフ」というディスコ・クラシックの名曲2曲を合体させたようなアレンジになっていて、このあたりのセンスには思わずニヤリとしてしまう人は多いのではないでしょうか? さらに中盤からはスパニッシュ・タッチへと変化していくという展開で、アコースフィアならではの技を感じてもらえる楽曲になっています。


アコースフィアの奥沢茂幸6曲目:ヴァーチャル・インサニティ/アコースフィア
原曲はロンドン出身のクラブ・ミュージック・ユニット「ジャミロクワイ」の1996年のヒット曲で、日本でもCMなどで使われて大人気を呼んだ楽曲です。清水のコード奏法を巧みに使った歌部分を表現するリードと、奥沢のハーモニックスを効果的に使ったバッキングとが、絶妙のアンサンブルを聴かせてくれます。途中の奥沢のジャジーなソロ・パートも聴きものです。その後4ビート・ジャズっぽく変化していく構成もカッコ良くなっていて、アシッド・ジャズのルーツを垣間見れる作品に仕上がっています。


アコースフィアの清水敏貴7曲目:愛のコリーダ/アコースフィア
原曲は1950年代から現在に至るまで、トップ・プロデューサー/アレンジャーとしてアメリカ音楽シーンとして活躍し、マイケル・ジャクソン、マイルス・デイヴィス、ジョージ・ベンソンをはじめとする数多くのアーティストを手掛けているクインシー・ジョーンズが、1981年にリリースしたソロ・アルバムのタイトル曲です。当時ディスコ・ミュージックが音楽業界を席巻していた時代だったため、クインシーが満を持して発表した楽曲で、ディスコでも大ヒットしました。オリジナルは大編成のオーケストラやコーラスなどがふんだんに使われているのを、アコースフィアはギター2本だけで演奏しています。彼らのアレンジ能力に感心せざるをえません。


アコースフィアの奥沢茂幸10曲目:ブギー・ワンダーランド/アコースフィア
原曲は1970年代のディスコ・シーンをリードし続けた、モーリス・ホワイト率いるスーパー・グループ「アース・ウインド&ファイア」の1979年のヒット曲(全米6位)で、女性コーラス・グループの「エモーションズ」がヴォーカル部分でフィーチュアされていた楽曲です。この曲も、「愛のコリーダ」と同じくオリジナルはホーン・セクションあり、コーラスあり、パーカッション隊ありの「大編成もの」ですが、それをギター2本だけで、原曲のイメージを損なうことなく、ここまでしっかり演奏してしまうアコースフィアのスキルの高さは驚異的です。


アコースフィアの二人11曲目:恋はあせらず/アコースフィア・フィーチャリング・パティ・キャスカート(from タック&パティ)
原曲はダイアナ・ロスが在籍し、1960年代には世界的なアイドルでもあった女性コーラス・グループ「シュプリームス」の1966年の大ヒット曲(全米1位)、そして1982年にはフィル・コリンズがカヴァーして全米10位を記録している楽曲です。この曲にはタック&パティのパティ・キャスカートがヴォーカルで参加してくれました。さすがに表現力と存在感抜群のヴォーカルを聴かせてくれます。キューバン・ミュージックの要素を巧みに取り入れたリズム・アプローチと、いわゆる「モータウン・ビート」が絶妙に融合したアレンジも、とてもユニークなものになっています。



以上が『LOVE GUITAR』の6枚目『Dance Love Guitar』の聴きどころです。もっと聴きたいという方は、ぜひ一度アコースフィアのライヴに足を運んでいただきたいと思います。東京では、2005年1月10日(祝・月)にアップルストア銀座3Fイベントスペースで毎月行なわれている、奥沢が愛用しているギター・メーカー「ギブソン」主催のイベント「ギブソン・ナイト・ショーケース・ライヴ」への出演がきまりました。そして、六本木にあるvelfarreというクラブの中にあるラウンジ・コーナーでは毎月一度ライヴを行なっています。東京以外でも、来年は勢力的にストリートやカフェでのライヴを行なう計画があるそうです。

今回まで7週間にわたり、日本で初めてのギターを軸に組んだコンピレーションCD集『LOVE GUITAR』のご紹介させて頂きましたが、いかがでしたか?このCD集の紹介を兼ねて、ギターによる名曲をご紹介できたのではないかと思っています。逆に言うと、そういう素晴らしい楽曲が『LOVE GUITAR』には詰まっているということなんです。今までご紹介した楽曲は、特にギターラボをお読みになっている方には、超オススメの楽曲ばかりです。

最後にこのセットのタイトル『LOVE GUITAR』についてお話ししたいと思います。自分の想いを伝える手紙が“LOVE LETTER”であるように、それぞれのギタリストが、それぞれの想いを演奏した楽曲集という意味の『LOVE GUITAR』、英語の命令形として「ギターのことを愛して!」というお願いの意味の『LOVE GUITAR』、そして「I LOVE GUITAR」「WE LOVE GUITAR」の主語の省略形としての『LOVE GUITAR』、ギターを愛する人のためのギターを愛する人たちによる演奏が詰まっているということを表現したくて、このタイトルにしました。その証しとして、CDケースも角型ギターケース風ですし、解説書も表紙がギターアンプを正面から見たところ、裏表紙が後ろから見たところにして、何から何までギター尽くしにしました。

この中から、みなさんのギターヒーローが見つかることを願って、この連載を終わりたいと思います。これまでご愛読ありがとうございました。


解説/株式会社エイベックス・ディストリビューション
Compilation Producer:國枝康雄


『LOVE GUITAR』の詳細はこちら
アコースフィアのHPはこちら

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